野球肘とホームラン
トレーニング

野球肘とホームラン

akiko

小学校5年生のとき、息子は野球肘になりました。

ピッチャーでもないのに、ある日突然腕が上がらなくなった・・・? 最初は、そう思っていました。

けれど今振り返ると、それは間違いでした。

野球肘は、ある日いきなり起こるケガではありません。

成長期の子どもは、肘の骨の先端にある成長軟骨が弱く、投球動作を繰り返すことで、少しずつ負担が蓄積していきます。

最初は「なんか痛い」「少し違和感がある」といった、はっきりしない感覚から始まることが多いそうです。

息子の場合も、実は徐々に痛くなっていました。 ただ、そのことを私には言いませんでした。

「痛いと言えば、休まされる」 そう分かっていたからです。試合に出たい、チームに迷惑をかけたくない、 自分だけ外されるのが怖い。

そんな思いから、子どもなりに我慢しながら投げ続けていたのだと思います。

4年生までは野球肘の検診も受けていて、「異常なし」と言われていました。

その安心感もあり、親である私は異変に気づけませんでした。

今思えば、気づけなかったのではなく、気づこうとしていなかったのかもしれません。

痛みは少しずつ進行し、 「投げると痛い」から 「腕を上げると痛い」へ変わり、 そして、どうしようもなくなりました。

肩より上に腕が上がらない。 その状態になって、初めて息子は私に言いました。着替える時に支障をきたしたからです。それでも野球で痛いとはいいませんでした。

すぐにスポーツ整形外科を受診しました。

診断は野球肘で、原因は投げ方でした。私がソフトボールをしていた事もあり、彼の投げ方がおかしいのはわかっていましたが、コーチでも監督でもない私が指摘することではなかったので・・。そこは少しだけ悔やまれます。投げ方ぐらいは教えてもよかったかもしれません。

肘だけの問題ではなく、体の使い方が崩れた結果、その負担が肘に集中していたのです。

それから、投げることは一旦すべて中止しました。

フォームを一から見直し、リハビリに時間をかける日々が始まりました。

5年生という、学童野球にとって大事な時期。 周りがレギュラー争いやポジション争いをしている中で、 「投げられない」という現実は、親としてもとても苦しいものでした。

私たちが選んだのは、 息子に無理に「普通の野球」をさせない、という選択でした。

幸い、打つことはできました。キャッチャーからファーストにポジションを変更し、送球はすべて下から投げることを条件に、練習に参加しました。

完全に休ませるべきだよ、今の私から当時の私にそう言ってあげたいです。なぜなら、中学生になってから再発したからです。フォームをなおす時間が彼にはもっと必要でした。

休むことへの恐れや焦りは、もしかしたら、子供より私にあったかもしれません。

早生まれの息子はまだ10歳。そんな時の1〜2か月の休部なんてこれから続く野球人生を考えたらほんの一瞬です。

でも、そう思えなかった息子がいました、私がいました。

忘れられないのは、土曜日の公式戦の日です。どうしても出場したかったので、「医師のOKをもらってから」との監督の約束を守るため、 午前中に病院へ行き、「下から投げることを前提にするなら試合出場は可能です」の言葉を医師からもらいました。 そこから車で40分かけて球場へ向かいました。

到着すると、ほとんどアップもないまま、すぐに打席が回ってきました。

正直なところ、無事に終わってくれればそれでいいと思っていました。ファーストで下投げなんてわがままるぎるよな、、とも。

ところが、打球はそのままフェンスを越えました。 ホームランでした。今でも信じられない出来事です。こんなことがあるから、無理してしまうんですよね、子供って。

その試合は4打数4安打。DHがないのでファーストの守備にはつきます。本人は痛いはずなのに何度か上から投げました。そのたびに監督から「下から!!」の声。そのうちチームメイトからも「下から!!」の声。無茶をさせてはいけません。今は反省しています。

野球肘に限らず、野球にケガはつきものだと思います。 どれだけ気をつけていても、成長期の体は追いつかず、立ち止まることがあります。

でも、子どもが一番輝ける時期は、そこではないと私は信じています。 今ではなく、この先にも、いくらでもあります。

だからこそ、ケガをしたときは焦らず、比べず、 まずはきちんと治すことを大切にしたいと思いました。

待つだけ、見守るだけは親にとってはつらいもの。しかし、本当につらいのは痛い思いをし、野球ができない本人です。

野球を続けるために、 そして、野球が好きなままでいるために、子供さんに無茶をさせないでくださいね。

まだまだこれから先楽しい野球が待っています。

akiko