目指せ「完食」!野球ママの春夏秋冬・お弁当対策
朝の4時、あるいは5時。
家族がまだ深い眠りの中にいる薄暗いキッチンで、私は一人、まな板の音を立てないように気を配りながらコンロの前に立ちます。
正直に言えば、料理が得意ではない私にとって、この時間は「苦行」そのものでした。
眠い目をこすりながら、それでも手を動かし続けられる唯一のガソリンは、夕方に帰ってきた息子が差し出す「空っぽのお弁当箱」を見ること、ただそれだけだった気がします。
外での練習は、想像以上に過酷です。
季節とともに変わる気温と、息子の食欲。
お弁当作りに慣れていなかった私は、SNSを漁り、先輩ママたちの背中を追いかけながら、必死に「日本の四季」と戦ってきました。
【春・秋】ルーティンで守る「黄金期」の体作り
気温が安定している春と秋は、いわばお弁当の「黄金期」です。
この時期のテーマは、迷わず「栄養バランスと効率」。
私は、卵焼き・ウィンナー・葉物の和え物の3種類を「鉄板の副菜」として固定しました。あえて定番を決めてしまうことで、忙しい朝の脳内リソースを節約する作戦です。
その代わり、メインのおかずだけは本人の希望を100%聞くことにしました。
「明日は何が食べたい?」その一言が、朝の迷いを消してくれます。
本人も「自分のリクエストが形になる」という楽しみがあるからか、この時期は驚くほど残さず食べてくれました。
まさに、冬の本格的な練習に向けた「体作り」の季節です。
【夏】「喉を通す」が最優先、氷と麺の救世主
夏は一転、恐怖との戦いです。一番の敵は「食中毒」、そして「食欲減退」。
ぎっしり詰めたご飯におかず……。
バテないように食べさせたい親心とは裏腹に、酷暑の中では喉を通らないのが現実です。
保冷剤や凍らせたパウチドリンクを詰め込み、「腐らせないように」と神経を研ぎ澄ませる毎日でした。
そんなある日、お弁当を半分以上残してきた息子がボソッと言ったんです。
「友達が食べてた、冷たいうどんが羨ましかった」と。
なるほど、その手があったか!と、目から鱗が落ちた瞬間でした。
そこからは「冷やしうどん弁当」が我が家の夏の主役に。
タッパーに茹でた麺を詰め、スープジャーに氷と一緒に「つゆ」を仕込む。
市販のポーションタイプのつゆもフル活用しました。
これが、私にとっても大正解。
揚げ物をする必要もなく、準備は驚くほど楽。
それでいてグラウンドに「涼」を届けられる。空っぽのタッパーが、夏の勝利の証でした。
【冬】「冷え冷えご飯」を撃退する、熱々のカレー旋風
そして、夏とは正反対の絶望が襲ってくるのが冬です。
気温とともに、お弁当はカチカチに。
冷え切った体で、冷え切ったご飯を口にするのは、もはや食事ではなく「修行」に近い。
またしても、息子のリクエストが私を救ってくれました。
「お友達のカレー、温かそうで羨ましかった」
この一言で、我が家の冬は「カレー旋風」が巻き起こりました。
スープジャーの保温機能を最大限に活かし、温めたレトルトカレーを袋のまま、熱湯と一緒にジャーへ。現地で袋を開ければ、そこには湯気が立ち上る熱々のカレーが待っています。
時には目玉焼きを乗せ、時にはとんかつをドーンと乗せて。
トッピングの希望を聞く時間は、私と息子の作戦会議のような時間でした。
「食べやすい」だけでも最強のサポート
お弁当箱の底が綺麗に見える瞬間。
それはママにとって、試合に勝つのと同じくらい嬉しい「勝利の瞬間」です。
中学生になり、本格的に「食トレ」が始まると、とにかく量を食べさせることが至上命令になります。
でも、詰め込むだけでは続かない。
暑くて食べられない日、寒くて味がわからなくなる日……。
最初の1年は、その「温度差」に何度も打ちのめされました。
それでも、他のママたちの知恵を借り、試行錯誤しながら日本の四季を乗り越えてきました。
体が大きくなっていく過程で、息子が必要としたのは、単なる栄養素ではなく、一口食べた時に「あぁ、美味しい」と一息つける、冷たさや温もりだったのだと思います。
お弁当作りは、確かに苦行かもしれません。
でも、あの空っぽのお弁当箱を見られた時の安堵感があるから、私は明日もまた、4時のキッチンに立てるのです。