「グラウンドの顔ぶれ」という壁を、架け橋に変えるために
教育

「グラウンドの顔ぶれ」という壁を、架け橋に変えるために

きむら

週末のグラウンド。そこにある「いつも通り」の景色

土曜の朝、まだ街が眠っているような時間に家を出て、重い荷物を抱えてグラウンドへ向かう。

到着して真っ先に目に飛び込んでくるのは、見慣れた顔ぶれです。

「おはようございます!」

交わされる挨拶、漂うコーヒーの香り、そして響き渡る子どもたちの声。

そこには、ある種の「聖域」のような完成された世界があります。 

毎週、同じ時間、同じ場所に集まり、同じ苦労を分かち合う。

朝4時起きの辛さも、泥だらけのユニフォームを前にした絶望感も、言葉にしなくても分かり合える仲間がいる。

「昨日、雨だったから洗濯大変だったよね」 

「今日のお弁当、何入れた?」

そんな何気ない雑談の裏で、私たちは無意識に強固な「連帯感」というシェルターを築き上げています。

監督の顔色ひとつ、子どものちょっとしたミスの後の沈黙ひとつで、「あ、今はそっとしておこう」とアイコンタクトで通じ合える。

この阿吽の呼吸こそが、過酷な週末を乗り切るための、私たちの「心の命綱」でした。

築き上げた「連帯感」という名の、高い壁

しかし、ふとした瞬間に、その命綱が「誰かを締め出す鎖」に見えてしまうことがあります。

たまにグラウンドへ足を運ぶお母さん。

仕事が忙しかったり、介護や下の子の世話があったり、家庭の事情は千差万別です。

そんな彼女が、所在なげにポツンと立っている姿。 

「何か手伝うことはありますか?」

と遠慮がちに声をかけてくれるけれど、私たちは反射的に答えてしまいます。

「大丈夫ですよ、いつもの流れでやっちゃうから!」

この「大丈夫」という言葉。

親切心のつもりで放ったはずなのに、相手にはどう響いているでしょうか。 

「あなたの入る余地はありません」

「ここは、ずっと守ってきた私たちが仕切る場所ですから」……

そんな、ある種、拒絶のようなメッセージとして、高い壁のようにそびえ立ってはいないでしょうか。

熱心にサポートすればするほど、私たちの結束は固くなる。

それは素晴らしいことです。

でも、その熱量の矛先が「身内」だけに閉じてしまったとき、そこには無意識の「境界線」が引かれてしまうのではないかと、ふと感じた瞬間がありました。

「ウェルカムな隙間」を作る勇気

もし、私たちが本当にチームのため、子どものために頑張っているのなら。

その頑張りのほんの一部を、「たまに来るママ」への「ウェルカムな隙間」を作ることに割いてみてもいいのではないかと思ったのです。

「これ、やっとくから大丈夫だよ」という言葉を、 

「これ、一緒にやってもらえると助かるな!」という、等身大の仲間の言葉に変えてみる。 

あるいは、仕事をお願いするのではなく、「今日、来てくれて本当に嬉しい!」と、その存在を肯定する言葉をかけてみる。

「完璧にこなすこと」が正解だと思っていたグラウンド脇の仕事。

でも、本当の正解は「誰もが自分の居場所があると感じられること」なのかもしれません。

「頑張り」が不満に変わる前に

毎週来ている側からすれば、「たまに来て、何もせずに子どもだけ見ている人」に対して、モヤッとした感情が芽生えることもあるでしょう。

「私たちはこんなに動いているのに」

 「あの人は座っているだけでいいな」

でも、考えてみてほしいのです。

その不満は、「頑張りすぎている」サインではないでしょうか。

一人で全部抱え込み、完璧に回そうとすると、他の誰かの「出番」がなくなってしまう。

そして出番がない人は、手持ち無沙汰になり、ますます「何をすればいいか分からない」という悪循環に陥る。

頑張ることで、誰かへの不満が溜まってしまうなんて、注いできた愛情があまりにももったいない。

少し休むこと、誰かに仕事を任せること。

それは「手抜き」ではありません。

他のママに「居場所」をプレゼントする、立派なサポートだと思うのです。

また明日も、この場所で笑いたいから

グラウンドに来ることが、誰かにとっての「義務」や「苦痛」になってはいけない。 

毎週来る人にとっても、たまに来る人にとっても、そこは「我が子の成長を信じる同志が集う、心地よい場所」であってほしい。

「いつも同じメンバー」という壁を、新しい風を通す架け橋に変える。 

一見、効率が悪くなるように感じるかもしれません。

でも、そうやって多様な家庭が関わり合えるチームこそが、結果として太く、強い根を張ったチームへと成長していくのだと、私は野球ママ生活を通じて確信しています。

「明日もグラウンドに行くのが楽しみだな」

そう全員が思えるベンチを、「いつもいる私」がほんの少し肩の力を抜くことから始めてみることにしました。 

グラウンドにいる全員が笑っている瞬間こそが、私たちママにとっての「最高の勝利」であってほしいと思っています。

きむら