キャッチャーをやめた本当の理由を、いまごろ本人から聞いた
私は熱血野球パパ、ではありません。
仕事や家庭の事情で、練習や試合にはほとんど行けていません。
次男のポジションが変わったことは知っていましたが、なぜ変わったのかは、ずっと知らないままでした。
先日、めずらしく落ち着いて話す時間があったので、そこを聞いてみました。キャッチャーをやめた理由です。前に本人が言っていたのは、あまり動かなくていいから気に入っている、という話でした。私はそれを何年か、そのまま信じていました。
そもそも、なぜキャッチャーだったのか。今回聞いたら、「かっこよかったから」と返ってきました。理由としてはそれだけです。面白かったところは何かと聞くと、「キャッチするといい音がする」。ミットに入るあの音のことだと思います。子どもが覚えているのは、そういうところなのだと思います。
ただ、続けているうちに、話が変わってきたようです。座っているから楽そうだ、という読みは、やってみたら外れていた。大変だったことを聞くと、「それたボールを拾うとき」と即答でした。逸らすたびに防具をつけたまま立って、追いかけて、また戻る。それを一試合くり返すのですから、楽なわけがありません。あの装備で走り回るのは、傍から見ているより、たぶんずっと重労働です。
しかも、逸れた球は体にも当たります。ときどき、当たってはいけないところにも当たるそうです。そこは本人も、かなり実感のこもった言い方をしていました。男親としては、聞いているだけで少し姿勢が正される話です。かっこいいから、動かなくてよさそうだから、という理由で始めた場所を、痛い思いをして手放した。理由としては情けないようですが、身をもって知ったことに変わりはありません。
今キャッチャーをやっているのは、別の6年生です。次男はサードを守っていて、打順は4番。ややこしいのは、所属しているチームが二つあることです。ひとつは楽しく勝とうという雰囲気のチームで、もうひとつは大会での優勝を本気で狙う、少し厳しいほうのチーム。それなのに、どちらでも打順もポジションも同じだそうです。親としては覚えることが一つで済んで助かりますが、本人からすれば、どちらへ行っても同じ場所に立たされている、ということになります。
投げるほうは、始めた当初から速かったようです。周りの子より速い球が来るので驚かれた、という話は、私も昔から何度か聞きました。今も速いほうらしいです。ただ、いちばん悔しかったことを聞いたら、「最終回にピッチャーで打たれたとき」と答えました。速い球を投げられることと、打たれないことは、別なのだと思います。そこを本人が分かっているのなら、それでいい気がします。
守りで得意なのは「逆シングル」だそうです。私はその場で分かったふりをして、あとから調べました。グラブをはめた手の外側に来た打球を、手の甲のほうに返して捕る捕り方のことらしいです。逆に、うまくなりたいのは「速い打球を捕ること」。サードのところには強い当たりが来るのだと思います。得意なことと、これからのことを、ちゃんと分けて答えられるのだな、と少し感心しました。
いちばんうれしかったのは「ダイビングで取ってアウトにした時」だそうです。その場面も、当然のように私は見ていません。話しぶりからすると、よほど気持ちよく決まったのだと思います。好きなプロ野球選手は柳田悠岐選手で、理由は「強肩でホームランを打つから」。守って、投げて、打つ。次男が好きだと言うものは、だいたい一つの方向に寄っていて、分かりやすいです。
区の選抜のほうも、今は続いています。そちらでも打つ役目を任されているようです。私が知っているのは、いつも「らしい」の形になったあとの話ばかりです。
こうして並べてみると、キャッチャーをやめたのも、速い打球を捕れるようになりたいと言うのも、同じ線の上にある気がします。座って待つより、動いて捕るほうが性に合っていた。それだけの話なのかもしれません。
私はそのどれも、グラウンドでは見ていません。聞けばこれだけ答えが返ってくるのに、聞かなければ何も出てきません。ポジションが変わった理由を知るのに何年もかかったのは、本人が言わなかったからではなく、私が聞かなかったからだと思います。次に何を聞くかは、まだ決めていません。