ファインダー越しの物語
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ファインダー越しの物語

obentokiroku_SNK

一眼レフのファインダー越しに、子どもたちの野球を撮る時間が好きです。

カメラ歴9年の野球母として、そんな時間を重ねてきました。

グラウンドに響く声、バットの音、スパイクで走る音、土の匂い。

そんな空気の中でシャッターを切るたび、その瞬間が確かに残っていきます。

ただ、思ったように撮れないことも多く一瞬のプレーに気を取られ、構えていたはずのカットを逃すこともあります。

あとからモニターを見て、少しだけ悔しくなる。それでもまたファインダー越しに、そっと見守るように撮り続けています。

子どもたちの野球には、結果以上に過程の中にドラマがあります。

ヒットを打った喜びだけじゃなく、三振した悔しさ、エラーのあとに見せる表情、仲間を応援する真剣なまなざし。

その一つひとつが、その子の「今」です。

ヒットの瞬間、塁に出た選手の顔はぱっとほどけます。ベンチに向かって手を上げる仕草。歓声に応えるような笑顔。

さっきまでの緊張が一気にほどけて、グラウンドの空気まで少し明るくなったように感じます。

一方で三振のあとは、バットを握ったまま一瞬だけ動かない選手もいます。視線は足元に落ちて、つま先で砂を軽く蹴る。

ベンチへ戻る途中、「ドンマイ」という声に小さくうなずくだけ。その背中には、言葉にならない悔しさが滲んでいます。

そんな瞬間に、ファインダーの中の世界はぐっと狭くなり、一人ひとりの表情に集中できます。

それでもボールだけを追うのではなく、「みんなを撮る」という意識を大切にしています。

ベンチで声を張り上げる姿、順番を待つ緊張した横顔、ふとこぼれる笑顔。

どれも一瞬で消えてしまいそうな表情ですが、だからこそ残したい。

チームスポーツは主役だけじゃなく、その場にいる全員が、この時間をつくっている。

試合後に写真を見返すと、スコアには残らない物語がそこにあります。

その一瞬を残したくて、私はファインダー越しから応援しています。

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