昼ごはんはパン一個。痩せたい6年生と、口を出しづらい父親
私は熱血野球パパ、ではありません。
仕事や家庭の事情で、練習や試合にはほとんど行けていません。
その代わりというわけでもないのですが、食べるもののことだけは、わりとよく知っている父親です。
このごろ、次男の昼ごはんが、コンビニのパン一個になりました。ローソンのソーセージパンです。試合や練習で朝から出ていく日も、それだけを持っていくそうです。少年野球をやっている6年生の昼ごはんとしては、いくらなんでも少ないのではないか、と思います。
以前は、唐揚げの入ったおにぎりでした。妻が家で握っていたものです。ごはんの中に唐揚げを入れてしまえば、おかずを別に持たせなくて済むし、手も汚さずに食べられる。グラウンドで手を洗えるところが近くにあるとは限りません。野球をやる子の母親の知恵というのは、こういうところに出るのだと思います。私はといえば、その材料をレジで通していただけです。
それがいつのまにか、コンビニのパン一個になりました。握る手間が要らなくなったのだから、妻は楽になったはずですが、私のほうは、あのおにぎりがなくなったことを少しさびしく思っています。
本人に聞くと、あまり腹が減らないのだそうです。そんなことがあるのか、と思いましたが、まじめにそう言っています。妻と話していて出てきたのは、水分ではないか、という説でした。夏場は特に、水筒やペットボトルの中身をよく飲みます。それでお腹がふくれてしまって、固形のものが入る隙がないのではないか、と。根拠は何もありませんが、ありそうな話ではあります。
甘いものについては、少し前から我慢するようになりました。「これ食べたら太るかな」と言って、実際にやめる日があります。理由も本人から聞きました。試合中に、三塁まで行けるはずの場面で、足が遅くて二塁で止まった、というのです。そこがずっと引っかかっているようでした。打ったのは自分なのに、そこから先で損をした、という感じなのだと思います。だから、もう少し軽くなりたい。子どもなりに、原因と対策がまっすぐつながっています。
きつい練習は何かと聞いたら、「ベーラン」と返ってきました。ベースランニングのことだそうです。私が野球をやっていたわけではないので、そのつらさは想像するしかないのですが、走るのが得意ではない子にとって、ひたすら塁を回る練習は、確かに一番きついのだろうと思います。好きな練習は「バッティング」。得意なことは好きで、苦手なことはきつい。そのままで、いっそ気持ちがいいくらいです。
ただ、こうして並べてみると、少し心配になります。走るのがきついと言い、痩せたいと言い、そのうえで昼ごはんはパン一個。それでは、走るための体もできないのではないか。親としては、そう言いたくなります。実際、一度だけ、もう少し食べたらどうかという意味のことを言った気がします。返事は覚えていません。たぶん、あまりまじめには聞いていなかったと思います。
とはいえ、私はグラウンドでの様子を見ていません。昼にパン一個で足りているのか、途中でバテているのか、それとも意外と平気なのか。どれも、家にいる私には分かりません。分からないので、こちらから言えることは、そんなに多くありません。せいぜい、買い物のときに、少しだけ量の多いものを選んでみるくらいです。
将来のことを聞いたときには、中学でも野球を続けたい、と言っていました。ヒットを打って、チームに貢献する選手になりたいのだそうです。打つほうで役に立ちたい、という気持ちは、はっきりしています。その体をつくるのが食事なのだ、という話は、今のところ本人の中でつながっていないように見えます。つながる日が来るのか、来ないまま大きくなるのかは、分かりません。
食べる量の話をしていると、こちらの言い分は、どうしても正しい側になります。もっと食べたほうがいい、朝はちゃんと食べろ、水ばかり飲むな。全部そのとおりなのですが、そのとおりのことを、練習も試合もほとんど見ていない父親が言う。その据わりの悪さは、自分でも分かっています。だから、あまり強くは言えません。
パン一個の昼ごはんも、水分でお腹がいっぱいになるのも、たぶん今だけの話だと思います。中学に上がって練習量が増えれば、いやでも腹は減るはずです。そのとき、パン一個では足りなくなって、また買い物の相談が回ってくるのだと思います。そのころには財布のほうがきつくなっていそうですが、それは、そのときに考えます。