車出しの苦悩と、負けた帰りの車内で知った「子どもたちの解決力」
週末のグラウンドを行き来する「車出し」。
子どもたちの頑張りを一番近い場所でサポートできる喜びがある一方で、実は親たちの間で密かに積み重なっているのが「車内の気遣いとマインドの疲弊」ではないでしょうか。
「車を出せる時はいい。でも、どうしても出せない時の心苦しさ……」
「乗せてもらった時、気まずい沈黙を作らないために何を話せばいいんだろう?」
今回は、野球ママなら一度は経験したことがあるであろう「配車にまつわる目に見えない苦労」と、ある日の帰りの車内で目撃した「子どもたちの救い」についてお話しします。
車を出せない日の「申し訳なさ」という重圧
チームの車出しは、お互い様。
頭ではそう分かっていても、どうしても仕事や家庭の都合で車が出せない週末もありますよね。
乗せていく側は「全然気にしないで!」と笑顔で言ってくれるものの、乗せてもらう側としては「毎回乗せてもらって申し訳ないな」「何かお礼をしたほうがいいのかな」と、どうしても心がザワザワしてしまうものです。
乗せてもらう以上、せめて車内の雰囲気は良くしておきたいもの。
だからこそ、乗せてもらう日は事前に「今日の会話ネタ」を用意して車に乗り込みます。 これもまた、野球ママならではの「見えない苦労」ですよね。
かといって、ずっと喋り続けるのも運転手の負担になるかもしれない。
けれど無言が続くと「気まずいと思われているのでは」と不安になる。
結局のところ、配車乗り切りに必要なのは「車内の沈黙を平気でいられるマインド」なのかもしれないと、ふと感じることがあります。
負けた日の帰り道、重圧がのしかかる車内
車内の気遣いがピークに達するのは、間違いなく「試合に負けた日の帰り道」です。
勝った日は大盛り上がりで帰れるから良いのです。
問題は、悔しい負け方をした時、そして何より乗せているママのお子さんのエラーやミスが原因で負けてしまった時。
運転席のお母さんの気持ちを思うと、軽々しく「ドンマイ」なんて言えない。 後部座席で落ち込んでいる子どもには、どんな言葉をかけてあげれば傷つけないで済むだろうか。 言葉を選べば選ぶほど車内には重苦しい空気が流れ、「誰かこの雰囲気を打破してくれ……!」と心の中で叫びたくなります。
大人がいくら気を遣っても、一度重くなった雰囲気を明るくするのは本当に至難の業です。
大人の気遣いを一瞬で吹き飛ばした、子ども同士のやり取り
しかし、そんな息が詰まりそうな車内で、思わぬ形で救われた出来事がありました。
その日も試合に負け、後部座席には痛恨のミスをしてしまった子と、我が子を含む数人の選手たちが乗っていました。
大人が「どう声をかけようか」と後部座席の様子を伺いながら必死に話題を探していた、まさにその時です。
うちの子が、落ち込んでいるその子に向かって突然こう言いました。
「お前、今日のあれはないわ〜!(笑)もう野球辞めてまえよ!(笑)」
横で聞いていた私は「ちょっと!なんてこと言うの!」と血の気が引きました。
大人の感覚からすれば、あまりにも不謹慎でストレートすぎる言葉だったからです。
ところが、言われた本人の反応は違いました。
「うっさいねん!(笑)」」 「お前も、あん時こんなミスしたやんけ!」
そう言い返した瞬間、車内にプッと笑いが起き、どんよりしていた空気が一気に軽くなったのです。
子どもは子どもなりに、相手が「言い返せる空気感」をちゃんと分かっていました。 下手に大人が「どんまい、次頑張ろう」と慰めるよりも、同じ目線で汗を流し、同じ悔しさを味わった仲間だからこそ言える冗談。それが、落ち込んでいた子の心を一番解きほぐしてくれたのです。
大人が抱え込まなくていい。子どもには彼らの「解決力」がある
この経験を通して、私は大きな学びを得ました。
車内の空気づくりや、負けたあとのフォローなど、大人はつい「自分がなんとかしなきゃ」と気を揉んでしまいます。でも、同じグラウンドで戦っている子どもたち同士には、大人には入っていけない「仲間だけの絆と解決力」がしっかり備わっているのだと気づかされました。
配車の苦労や気遣いは、野球ママを続けている限りゼロにはならないかもしれません。 乗せてもらう時の心苦しさも、車内の沈黙への恐怖も、みんな同じように抱えながら週末を迎えています。
けれど、後部座席で繰り広げられる子どもたちの逞しいやり取りを見ていると、「大人がそこまで完璧に気を回さなくても、子どもたちはちゃんと自分たちのやり方で前を向くんだな」と少し肩の荷が下りる気がします。
車を出せない日も、負けて重い空気の日も、「子どもたちの力をちょっと信じる」「子どもには子どもの世界がある」と、肩の力を抜いてサポートをしていこうと思った出来事でした。