家でどれだけ自主練していますか?
学童野球の保護者と話していると、しばしば話題にあがります。
「家ではどれくらい自主練していますか?」
これから学童野球を始める保護者の方は、きっと気になるところでしょう。我が家の答えは、とてもシンプルです。ほとんど、自分からはやりませんでした。
「えっ?」と思われるかもしれません。
毎日何百回も素振りをしていたとか、休みの日は朝から晩までバッティングセンターへ行っていたとか、そんな感動エピソードはありません。バッセンには週に1回は行っておりました。でもその程度です。
息子は、本当に自主練をしない子でした。素振りだけは毎日していました。
……いや、正確に言うと、させられていました。
父親からは、
「バット振ったんか!」
と声が飛び、母親の私は、
「早く振っといで。」と急かす。そんな毎日です。
本人は、やる気満々というより、「はいはい、やりますよ。」という顔で、なんとなくバットを振っていました。
だから、「自主練」というより「半自主練」です。でも、それでも毎日続けると、近所にも音が響くようになります。
カーン。ブン。カーン。
ある日、ご近所さんから「バットを振る音がうるさい」と言われました。もちろん、ご迷惑をおかけしたことは申し訳ないと思います。
でも、少しだけ思ったことがあります。野球人口が減っていると言われる時代です。子どもが家で練習している音くらいは、「頑張ってるな」と温かく見守ってもらえる地域であってほしいな、と。これは私の願いです。
もちろん、時間帯への配慮や近隣への気遣いは必要です。だから我が家も朝早くや夜遅くは避けるようにしました。それでも、住宅街で野球を続けるのは、なかなか難しいものです。
中学生になると、さらに事情は変わりました。クラブチームに入り、硬式野球になったからです。硬式ボールの音は、軟式とは比べものになりません。
「カキーン!」ではありません。「ドーン!」という衝撃音です。
さすがに自宅で打撃練習は無理でした。そのため、自主練の中心は素振りと羽打ちになりました。
羽打ちは本当に便利です。ボールほど飛ばず、安全で、ミートの練習にもなる。
ところが、高校生になると、その羽打ちですら限界を迎えます。
まず、羽が壊れます。当初は姉のバドミントン部から廃棄する羽をもらっておりましたが、すぐに壊れてしまいます。そして、野球の羽うち専用の羽があるんです。当時で10個入りで1500円ぐらいしました。高いんです。バドミントンの羽よりはかなり丈夫ではありました。が、壊れるんです。羽の頭の部分が割れてしまうんです。
そして、距離も半端なくなります。最初は道路の中で収まっていた羽が、だんだん隣の家へ。そのうち屋根の上へ。そして最後は、「あれ?どこ飛んだ?」状態です。
本人は笑っていますが、回収する親は笑えません。
「すみません、また羽が……。」お隣には差し入れしておきました。本当の話です。
野球用のネットも当然購入してありました。ネットでははみでてしまうこともあり、さらに100均でカラス除けネットを購入して、広範囲を網羅できるように補強しました。しかし、息子から返ってきた言葉は、
「ネットやと飛んでる感じせぇへん。」
いやいや、それを我慢するためのネットでしょう。そう思いながらも、最後の数球だけは私が正面からトスを上げ、ネットを外して打たせることもありました。
親というのは不思議です。危ないと分かっていても、「あと少しだけなら」と付き合ってしまいます。
でも、その「あと少し」も、高校三年生で終わりました。本人が言いました。「もう無理やわ。」打球が飛びすぎるのです。羽がすぐに壊れるんです。道路では狭い。ネットでも物足りない。羽打ちですら、近所に飛んでいく。
成長したことが、家で練習できなくなる理由になるなんて、学童野球を始めた頃には想像もしませんでした。
振り返ると、家での自主練は決して理想的ではありませんでした。自分から進んでやるタイプでもありませんでした。
親に言われて、しぶしぶ始める日もたくさんありました。それでも、バットを握り続けました。
野球を続けました。
だから私は、今、学童野球を始めたばかりの保護者の方に伝えたいのです。
「うちの子、自主練しないんです。」
でも、焦らなくて大丈夫です。毎日、目を輝かせて自主練する子ばかりではありません。
親に言われながらでも、少しずつ続ける子もいます。やる気に波があるのも普通です。大切なのは、「今日はやる気がないから終わり」ではなく、細くてもいいから続けること。
しかし、そんな息子が今語ります。素振りしていた日は打てる、と。ほんならふっとけ、と思いました。
自主練は決して無駄にはなりません。素振りをすればきっと結果がでます。そして、いつか「あの頃はガレージで素振りしてたな」と笑って思い出せる日が来ます。
願わくば、その頃には、ご近所さんから「またバットの音がするね。頑張ってるな。」と笑ってもらえる、そんな地域が増えていてほしいものです。
最近、近所でトスバの音が聞こえるんです。がんばれ、私はいつも心の中で応援しています。