キャッチャーを頑張る息子の身体を守る、セルフケア習慣
試合が終わって防具を外した息子の顔に、マスクの跡がくっきり残っていました。
額と頬に、赤いライン。汗で張りついた前髪。
ミットを地面に置くと、息子はしゃがんだまま、そっと膝をさすっていました。
「膝、大丈夫?」
そう聞くと、返ってくるのはいつもの一言です。
「大丈夫」
……本当かな、と毎回思ってしまいます。
キャッチャーというポジションを息子が守るようになってから、私は試合の見方が少し変わりました。
配球や送球より先に、つい身体のほうへ目がいく。
今日は何球受けたんだろう。何回しゃがんで、何回立ち上がったんだろう、と。
はたから見ると、キャッチャーはどっしり構えているように映ります。
でも実際は、1球ごとにしゃがんで、立ち上がって、また構え直す。
その動きを、練習でも試合でも何百回と繰り返しているわけです。
膝、腰、肩。負担は身体のあちこちに、同時にのしかかります。
しかも、成長期の子どもの身体は、まだ出来上がっていません。
柔らかいぶん無理がきいてしまうので、疲労が静かに積み重なっていることに、本人も周りも気づきにくいのです。
そんなとき、あるニュースを見て、正直「もう少し早く対応して欲しかった。」と思いました。
全日本軟式野球連盟が、2027年シーズンから「同じ試合で投手と捕手を兼ねること」を禁止するルールを導入します。
理由は、二塁へ送球するときに肘へかかる負担の大きさ。スポーツ医学の専門医が専用の機器で計測したところ、ピッチャーが1球投げるときの、およそ2倍近い負荷が捕手の肘にかかっていたそうです。
盗塁を刺そうと全力で腕を振る小学生なら、なおさら。
つまり、「キャッチャーの身体、きつそう」という親の心配は、気のせいではなかった。
大人たちがルールを変えてまで守ろうとするほど、実際に負担の大きいポジションなのだと、数字が教えてくれました。
一番こわいのは、はっきり痛みが出てからです。
本当に見てあげたいのは、その手前にある小さな変化のほうだと思います。
立ち上がる動きが、なんだか重い。帰ってきてすぐ横になる。階段をのぼるが辛そう。無意識に肩を回している。
「休みたい」と言い出せず、ひとりで抱え込んでしまう子も少なくありません。
だからこそ、本人が口にしなくても、親が「いつもと違うな」に気づいてあげたい。
毎日そばで見ているからこそ、できることだと思います。
我が家で続けている、3つのケア
難しいことは、ひとつもしていません。
① まずは、湯船に浸かる
疲れて帰ってくると、シャワーだけで済ませたくなる気持ち、よくわかります。
それでも、10分でいいから湯船に浸かる。身体を温めると、こわばった筋肉がゆるんで、翌日への疲れの残り方がちがってきます。
太もも、お尻、股関節まわり。キャッチャーが硬くなりやすい場所ほど、お風呂の効果は出やすい気がします。
② 股関節をほぐす
キャッチャーにとって、股関節の柔らかさは、膝と腰を守るための土台です。
ここが硬いと、しゃがむたびに膝や腰へしわ寄せがいってしまう。
開脚、股関節回し、もも裏伸ばし。テレビを見ながらで十分です。
5分でも、毎日積み重ねると身体は応えてくれます。
③ 肩まわりも、忘れずに
膝や腰に気を取られて見落としがちですが、キャッチャーの肩は返球や送球でかなり働いています。
肩甲骨を動かす。
腕をゆっくり回す。
背中を伸ばす。
この3つを寝る前に足すだけでも、投げる動きがずいぶん軽くなるようです。
野球が好きな子ほど、無理をします。
休みたくない。練習したい。チームに迷惑をかけたくない。
その気持ちは、痛いほどわかります。
でも、無理を押し通すことと、頑張ることは、少し違う。
休むこともまた、長く野球を続けるための立派な練習なのだと、私は思います。
親としても、つい迷ってしまいます。
せっかくの練習なのに。休ませて大丈夫かな、と。
それでも、違和感を無視して悪化させてしまうほうが、あとがずっとつらい。
ルールを変えてまで子どもの肘を守ろうとする大人がいる時代です。
親が「今日は休もう」と声をかけることを、ためらわなくていいはずです。
キャッチャーは、目立つようで目立たないポジションです。
打てば注目され、盗塁を刺せば拍手が起きる。
でも、その裏で誰よりもしゃがみ、誰よりも全体に目を配り、誰よりも身体を張っていることは、案外気づかれないままです。
だからこそ、一番近くにいる家族が気づいてあげたい。
「今日、疲れてない?」
「膝、大丈夫?」
「寝る前に、少しだけストレッチしようか」
そんな何気ない一言が、明日の息子の身体を守っていく。
上手くなることも、活躍することも、もちろん嬉しい。
でも一番の願いは、元気に、長く、野球を好きなまま続けてくれることです。
大変なポジションを選んで頑張る我が子を、これからも一番近くで支えていきたいと思います。