初ヒットから始まった「ノーサイン野球」彼を信じてくれた大人たちに感謝
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初ヒットから始まった「ノーサイン野球」彼を信じてくれた大人たちに感謝

きむら

初めてのヒット。

それは、子ども本人が一番嬉しいのはもちろんですが、実は親もめちゃくちゃ嬉しい瞬間です。

我が家にもその瞬間は確かに訪れました。

けれども息子の一言で、あの感動は一気に笑いへと変わってしまったのです。

◆初めての大会にソワソワ

息子が野球を始めたのは、小学2年生の春。

まだ低学年ということもあり、試合といっても可愛らしいプレーばかりで、グラウンド脇でママ達と楽しくおしゃべりしながら見ているくらいでした。

しばらく経ったある日、3年生の大きな大会に、2年生も同行できることになりました。

3年生の人数が少なかったためです。

いまや多くの野球チームは部員不足に困っています。

息子が入ったチームも例外ではなく、3年生は試合を行うために必要な人数に足りていなかったのです。

2年生は、整えられた広いグラウンドや、横断幕が張られた応援スタンドなど、いつもと違う雰囲気を目の当たりにし、嬉しい子もいれば緊張する子もいて、空気はソワソワ。

ママ達も初めての公式試合に、分からないことだらけでソワソワ。

先輩ママの動きについていき、一緒にスタンドに入ります。

先輩ママも皆さん気さくな人たちばかりで、ママの間では「先輩・後輩」みたいな空気は一切ありませんでした。

そんな空気を作って下さった先輩ママ達には感謝です。

ソワソワした気持ちの中、試合が始まりました。

◆そして、人生初ヒットを経験

そして迎えた、息子の打席。

1打席目は見事に三振。

そして迎えた、2打席目。

3ボール・2ストライクに追い込まれた息子。

ここで監督がベンチから息子に声をかけます。

息子は監督のサインを見て、軽くうなずき、バッターボックスでもう一度体勢を整えました。

その姿は、とても落ち着いているように見えました。

ピッチャーが振りかぶって投げます。

息子はタイミングを取ってバットを振ります。

すると、カキーン!という金属音と共にボールがセカンドベースの横を抜けていきました。

息子は一瞬ビックリしていましたが、一気にセカンドベースまで走っていきました。

ランナーが一人帰ってきて点数も入り、ベンチもスタンドも、一気に湧き上がりました。

その時の私はというと、もちろんスタンドから大喜び。

あの時はそこまで叫んでいるつもりはなかったのですが、動画に私の大きな声がしっかり残っていました。

人生初ヒットを経験できた記念すべき日。

親も子も、何とも言えない充実感でした。

家に帰ってからは、もちろんヒットを打った瞬間の話でもちきりです。

息子の顔は活き活きとして、それはそれは嬉しそうでした。

その打席の動画を何回も観て、何回も喜ぶ。

「いけー!走れー!」私の声が大きすぎて、息子に「お母さん、めっちゃうるさい」と笑われる。

初ヒットという喜びで、私も息子も舞い上がっていました。

◆あの時のサインはなんだったのか?

そして少し空気が落ち着いたとき、私はあることがふと気になったのです。

「あの時監督から出たサインは何だったのか。」

息子は静かにうなずき、バッターボックスで体勢をとり直し、そして打てたヒットです。

どんなサインが出たんだろうと、興味が出たのです。

野球素人の私には、「監督のサインを選手が受け取って、試合を進めていく」ことが、とてもかっこよく思えたのです。

どんな戦略で1点を取りに行ったのか、興味津々でした。

そして息子に「あの時、監督からのサインは何だったの?」と、ワクワクしながら聞きました。

返事を待つ私に、帰ってきた息子の答えは、

「え?サイン?あぁ、わからんかった!俺、知らんもーん」

うそでしょ?

あの時、うなずいてたよね?

分かった感じでうなずいてたよね?

分かった感じで体勢整えてたよね?

一瞬でいろんな感情が頭を巡り、訳が分からなくなり、爆笑していました。

◆彼を信じてくれた大人に感謝

もともと勉強は得意ではない息子。

何かを覚えるのも苦手です。

当然、野球の複雑なサインも例外ではありませんでした。

普通なら「なんで覚えないんだ!」と怒られてもおかしくない場面です。

周りのメンバーはどんどんサインを覚え、バッターボックスで監督からの複雑な指示を受け取るようになっていきます。

しかし、彼の打順が回って来た時の監督のサインは、「どうぞお好きなように」と言わんばかりの、優しく静かなうなずきのみ。

監督の彼に対する選択は、「サインを覚えさせる」ことよりも、「のびのびとプレーさせる」ことでした。

彼がサインを覚えたのは、6年生の終盤です。

そんな彼を監督やコーチは、全面的に受け入れてくださっていました。

この経験が、息子ののびのびとした野球スタイルの礎になったと感謝しています。

きむら