甘いものを我慢する6年生。食べ物で気づいた、次男の「痩せたい」の理由
私は熱血野球パパ、ではありません。
仕事や家庭の事情で、練習や試合にはほとんど行けていません。
だから次男の野球のことは、家の食卓や、買って帰るものの変化から知ることが多い父親です。
相変わらず、次男にはアタリメを買わされます。カロリーが低いから、というのが本人の言い分です。小学6年生にしては渋い選択だな、と最初は思っていましたが、最近はもう、それが我が家の定番になりました。
ただ、しばらく見ていて、少し様子が変わってきた気がします。前は、アタリメをかじった直後に普通にアイスを食べたりしていたのに、最近は、甘いものを我慢しているような場面が増えました。「これ食べたら太るかな」と言って、実際にやめる日もあります。前は言うだけだったのに、行動が伴ってきた気がします。
最初は、また見た目を気にしているのかな、と思っていました。この年ごろは、少しずつ色気も出てきます。でも、どうやらそれだけではなかったようです。
妻づてに聞いた話です。妻が次男に、「代走を出されるの、嫌なの?」と聞いたことがあったそうです。次男は「嫌だ」と答えたらしいのです。
代走というのは、打って塁に出たあと、足の速い別の子と交代させられることです。次男は打つほうはいいのですが、足はあまり速くありません。だから、せっかく自分で打って出塁しても、そこから先は別の子が走る、ということがあるようです。それが、本人としては悔しいのだと思います。
そう聞いて、私はいろいろつながった気がしました。甘いものを我慢するのも、体重を気にするのも、色気というより、たぶん「もう少し速くなりたい」という気持ちのほうが大きいのかもしれません。打ったところまでは自分なのに、そこから先を人に任せるのは、たしかに悔しいだろうな、と思います。
こういう本人の気持ちも、私は本人の口からは、あまり直接聞けません。たいてい、妻が横から聞き出したものを、さらに私が後から聞く、という順番です。父親は、情報でいうと三番目くらいにいます。それでも、三番目には三番目なりに、伝わってくるものはあります。
それだけではありません。少し前から、次男は自分で素振りをするようになりました。学校から帰って、そのまま友達と遊びに行って、夕方また帰ってくる。それだけで十分くたびれているはずなのに、そこからバットを持って、外に素振りをしに行く日があります。家の中には振るスペースがないので、わざわざ外に出ていくのです。誰かに言われてやっているというより、自分でやろうと思ってやっている感じがします。やらされている素振りと、自分でやる素振りは、たぶん違います。
くたびれて帰ってきたあとに、それでもまた出ていく背中を見ると、少しだけ、おっと思います。足の速さは、急には変わらないと思います。それでも、本人が気にして、自分なりに何かを始めた、ということのほうが、たぶん大事なのだと思います。
そのわりに、食べるものは相変わらずです。友達と遊んだ帰りに、コンビニでファミチキを二つ買って帰ってきた日がありました。甘いものは我慢しているのに、ファミチキは我慢しないのか、と少しおかしくなりました。ファミチキは、昔から今まで、ずっと好きなままです。そこは、まったくぶれません。痩せたいと言っている口で、ファミチキだけは別腹ということにしているようです。
しかも、その二つのうちの一つを、長男にあげていました。頼まれたわけでもないのに、自分のぶんを分けている。ふだんは言葉づかいも荒くて、頼みごとも雑なのに、そういうところで、ふっと優しさが出ます。荒っぽく見えて、意外と人のことを見ているのだと思います。
食べ物の話をしていると、次男のいろいろな面が見えてきます。悔しくて甘いものを我慢する意地の部分と、ファミチキだけは譲れない子どもっぽい部分と、それを兄に分けてあげる優しい部分。全部、同じ一人の中に、まだ混ざったまま入っています。どれかにきれいにまとまっていないところが、いかにも今の年ごろだな、と思います。
私は、グラウンドで次男の代走の場面を見たわけではありません。悔しそうな顔も、直接は見ていません。それでも、家の食卓や、コンビニの袋の中身から、その悔しさや優しさが、少し遅れて伝わってきます。
野球の成長は、打率や勝ち負けだけではないのかもしれません。何を我慢して、何を譲らなくて、誰に何を分けるのか。そういう食べ物まわりの小さなことのほうに、案外、いまの次男が出ている気がします。そしてそれに気づけるのは、たぶんグラウンドではなく、家にいる父親のほうなのだと思います。